「クライマーズ・ハイ」読みました。



クライマーズ・ハイ (文春文庫) クライマーズ・ハイ (文春文庫)
横山 秀夫

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昔、映画「野生の証明」を作るにあたって、森村誠一の原作をばらばらにして部屋にまき散らし、拾った順で脚本を書いたという話(真偽のほどは定かではありません)を聞いて、映画は映画、小説は小説と強く思ったこともあり、また、そもそも文字媒体と動画&音声媒体とでは明らかに表現方法が違うので、映画と小説を全く同じものにするのは無理があると思っています。

今回ももちろん、映画は映画、小説は小説と思って映画は見たのですが、いくつか腑に落ちない部分があり、それを埋めるのに、果たしてそれを小説を読むことによって補えるのかは大きな疑問だったのですが、新聞社勤務のマイミクさんの「思いっきり感情移入した」というコメントを見て、なんとなく、小説が腑に落ちない部分を解決してくれそうな気がして、滅多にしない「映画を見て小説を読む」ということをすることにしました。

大枠のストーリーは映画も小説も同じなのですが、双方合致している部分は全体の半分ぐらいではないかなと思われます。映画の方はある意味ドラマチック(悪く言えば大げさ)である分、力強さもあるのですが、小説の方には私の「なぜ」には十分応えてくれるだけの優れた心理描写の表現が多々あり、映画と小説と両方に接したことは正解という感じです。

私の場合、映画と小説と両方見てしまうと、どちらか片方が「色あせる」ことがあるのですが、この「クライマーズ・ハイ」については、どちらも秀逸。非常によく出来ていると思います。

ただ、映画について残念なのは、主人公の「親子」関係に対する感情の描き方が弱いところ。主人公の「父親になりきれなかった理由」がこのストーリーの大きな根っこなので、そこをもっとよく描くことが出来ていたなら、映画はもっと深く感情豊かなものになったのではないかと思ったりもします。

映画のラストも、なんで、あんなところまで行っちゃったですかねというのが正直な感想。小説のラストの方が数段良いので、そこはそのままの方がよかったのではないかと。まあ、そういうラストにするためには前提として、先の「親子」関係を深く描く必要があるので、2時間30分という枠では無理だったということなのかな。

ちなみに、映画で一番私が印象に残ったのは社長の「あんなのは塗り絵だ」のひとこと。今の世の中、塗り絵だらけ。もっと気概をもって、自分というものを強く押し出して世の中に情報を送り出して欲しいものだ。

というわけで、読み応えありました。「クライマーズ・ハイ」。映画も私的には好き度80%です。

GOTOも読みました。社会派小説で重いのは読みたくないのですが、途中からは引き込まれました。映画だと冗長になってしまうとは思いますが、小説のラスト(とそれにつながるエピソード)の方が、好きだなあ。
小説の完成度も高し。映画を見たら、ぜひ小説も。読むと映画の理解も深まります。★★★★

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